もしあなたが、管理職になったとたんに残業代がつかなくなり、手取り収入が減ってしまったとしたら、何のために昇進したのかわかりませんよね。
仕事の責任は増えたのに、給料は下がる。そんな「名ばかり管理職」が増えています。
「名ばかり管理職」は違法なので、残業代を請求できることがあります。
どういう場合に「名ばかり管理職」だといえるのか、普通の管理職との違いなどについて解説します。
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名ばかり管理職とは?まずは管理職の定義を知ろう
名ばかり管理職の説明をする前に、まずは管理職というのはドいう言った仕事を指すのか、それを明確にしていきましょう。
管理職というのは、マネージャーとか課長とか、肩書きではないのです。
労働法で定められている管理監督者であることが必要であり、実質的な管理監督者と認められるためには4つの要件を満たす必要があります。
1.経営に関与することができて、経営陣に意見する権限がある
管理監督責任があるということは、自分の所属する部署での責任だけでなく、会社の経営に対しても責任を負っているということです。
2.採用や人事に関する権限があること
自分の部署のメンバーを採用したり、異動や解雇に関する権限も持っています。
これは、単に採用面接を担当しているというようなことではありません。
3.出退勤が自由であること
責任者というからには、自分の出退勤は自分で管理をしますので、出勤時間等について管理されることはありません。
勤怠を管理されていたり、例えば業務開始時間に遅刻したことでそれが査定に響くようでは、管理監督者とはいえません。
4.他の社員と比べて待遇(給与)が良いこと
管理監督者は、給与の面でも他の社員と比べて優遇されていることが必要です。
一概に月収がいくら以上とはいえないのですが、例えば
- 残業手当がついている部下よりも給与が低い
- 管理職になったら残業手当がつかなくなったために手取りが減った
というような場合は、優遇されているとはいえません。
何故会社は管理職にしたがるのか
労働基準法には、「管理監督者には割増賃金の支払は適用しない」という決まりがあります。
つまり、管理監督者にすれば残業代を払わなくて済むわけです。
これが「名ばかり管理職」の実態です。
あなたは大丈夫?名ばかり管理職になっていないかチェック
管理監督者というのは、上記の条件を全て満たしている人のことをいいます。
会社の組織上の役割ではないので、自分が「名ばかり管理職」になってしまっていないか、チェックしてみてください。
- 支店長という名はついているが、会社の経営に意見はできない
- 経営者の指示を部下に伝えているだけで、経営に関わっているわけではない
- 採用の面接はしているが、最後の決定権はない
- 実務を取り仕切っていはいるが、部下の昇給や異動に関しての権限はない
- 出退勤が管理されている
- 部下よりも給与の手取りが低い
- 遅刻をしたら給与に影響する
- 役職手当はついているが、ほんの数万円で優遇されているとはいいがたい
上記の項目に当てはまるものが多いほど、「名ばかり管理職」である可能性は高いでしょう。
肩書きに騙されない
店長に昇進!なんて甘い言葉に騙されてはいけません。
本来の管理監督者には、その地位にふさわしい報酬が与えられなくてはいけません。手取りが下がる、などということはないのです。
飲食業や小売業に多いパターンです。
勤怠管理をされている
経営陣であれば、いつ出勤しようと自由なはずです。もしも制度上は出退勤がないという形になっていたとしても、
- スタッフが来る前に自分が来ないといけない
- 閉店まで業務を管理しなければいけない
など、実質的に勤怠が管理されているような状況であれば、それは管理監督者とはいえません。
形ばかりの諸手当
「管理職手当」などという項目が給与明細にあったとしても、残業手当がつかなくなったことで手取りが下がるなら、それは優遇されているとはいえません。
そんな手当よりも残業代がついた方が高くなるという場合は、「名ばかり管理職」であるといえるでしょう。
名ばかり管理職になってしまっていた時の対策
管理職であるということを理由として、実質的には管理監督者とはいえないのに残業手当を支払わないのであれば、それは違法です。
労働基準法により罰則規定もありますから、毅然として対処する必要があります。
証拠を集める
まず、自分が名ばかり管理職であると主張するためには証拠集めが必要です。
- 出退勤が管理されていること
- 上司からの指示
- 残業時間の証拠
- パソコンのメールの送受信
- 給与明細表
などから、業務内容と権限とが一致していないにも関わらず、残業代が支払われていないという証拠を集めます。
残業代などを会社に請求
集めた証拠を元に、会社に対して自分が名ばかり管理職であることを示し、残業代を請求します。
これからの分はもちろんのこと、過去の残業代は2年遡って請求することができます。
人事や総務の担当者に時間を摂ってもらって話しにいくのでもいいですし、内容証明郵便で請求してもいいと思います。
ここで大事なのは、どうやって交渉するかということです。
労働基準監督署に相談する
会社側に請求はしたけれども交渉がうまくいかない、聞いてもらえないという場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
会社との交渉なしに行っても「まずは会社と話してみてください」ということになってしまうので、自分で会社と交渉してもダメな場合に相談するといいです。
証拠が揃っていれば必要な指導をしてくれると思いますので、そうすれば会社側の対応も変化が出てくるでしょう。
労働問題専門の弁護士に相談
労働基準監督署の指導があってもダメな場合は、労働問題専門の弁護士に相談してみましょう。
弁護士というとハードルが高いように感じますが、最近では最初の相談は無料というところも増えてきました。
請求できる残業代から○%というような形で報酬を支払うという形なら、弁護士料で消えてしまうという心配もありません。
どのような形で報酬を支払うかを調べて、頼む弁護士事務所を探すといいですね。
どうしてもダメなら転職も視野に
今いる会社とは争いたくない、争うエネルギーがもったいないと思うこともあると思います。
過去の残業代は請求するとして、今後の働き方は新たに考えてもいいでしょう。
そのようなブラック企業ではなくて、もっと社員のことを考えてくれる会社に思い切って転職した方が、気持ちよく働けるかもしれません。
泣き寝入りはしない。諦めずに交渉してみよう
注意が必要な肩書きは、
- マネージャー
- リーダー
- 店長
などですね。
肩書きばかり偉そうでも実質的な権限がなければ管理職とはいえません。
責任だけが重くなって働くのが辛くなったという人は、自分の働き方を見直し、請求できるものは遠慮せずにしてください。