実は少し前から人気がじわじわとあがっている、「写経」。
写経と言えば、お寺で筆を持って正座させられ、ひたすら字を書く…。そんな風に想像してしまうかもしれません。
わざわざ休日に、堅苦しい場所になんて行きたくないし、おもしろいというイメージもないですよね。
ですが写経は、思っているよりもずっと奥深いもの。写経をするだけで、私たちのからだにさまざまな効果がもたらされるとも言われています。
そしてその効果によって人気に火がついてきていると言っても過言ではありません。
今回は、そんな写経の効果と、どこでできるのか、どんなことをやるのかをまとめてみました。
Contents
写経とは?もともとの成り立ち
写経とは、「仏教の経典を筆で写経用紙に書き写す」ことをさします。
現在では誰でも幅広く写経をすることができますが、本来は奈良時代に僧侶の修行のひとつとして始められたものです。
仏教の経典は数多く存在していますが、どの経典を書き写すかは定められていません。信仰によっても違いますし、お寺によっても差があります。
仏門に入っていなくても体験できる写経で、一番有名かつ人気なのが「般若心経」という経典です。
般若心経は、もとは「大般若心経」という600巻もある経典を、276文字にまとめたもの。すべてが漢字(漢詩)で綴られています。
般若心経はもともとインドに原文がありましたが、誰によって作られたのかはわかっていません。
「孫悟空」にも登場する三蔵法師のモデルになった「玄奘三蔵」によって、サンスクリット語から中国語へ翻訳されたんです。
嬉しい写経の効果5つ!現代の人が率先してやるべき理由
写経は大人に大人気のアクティビティのひとつ。その理由は、様々な効果が得られるからだと冒頭にお伝えしました。
修行として行われていた写経の効果は「心を無にする」「仏のお考えを読み解く」ためとされていましたが、現在では医学的にも嬉しい効果があるんだと実証されています。
そしてその効果は現代の日本人にとって、どれも嬉しいもの。実際に、どんな効果があるのかを具体的にご説明しましょう。
脳を活性化して認知症改善
超高齢化社会に差し掛かりつつある日本は、高齢者になってからの病気に最も気をつけなければいけません。
その中でも初期症状として、物忘れが激しくなる「認知症」は、最も避けたい症状のひとつです。
認知症は脳の老化現象のひとつでもありますが、手を動かすことで脳の活性化に役立つ「写経」を取り入れることによって、脳が若返り「認知症改善」の効果が認められているんです。
文字を追うことで集中力がつく
全てが漢字で綴られている経典を書き写す、写経。文字をひとつひとつ追っていき、常に注意を払うことで集中力が身につきます。
また、
- 普段慣れていない筆をつかうこと
- 間違えたら書き直しがきかないこと
など、集中力をアップさせる要素が写経にはたくさん詰まっています。
普段集中力が切れやすいと感じている人には、ぜひおすすめしたいですね。
繰り返すことで字が上手になる
PCやスマホで文字を打つのが主流になった今、文字を書く場面はどんどん少なくなっていますよね。
ですが、仕事の時、契約の時、ふとした時に文字を書くことはまだまだあります。そんなとき「字が下手だから書きたくない」という人も少なくありません。
字は、丁寧に何度も書くことで上達できます。
特に写経は、字の主構成である「止め・折れ・はね・はらい」の全てを網羅しているため、繰り返し行うことで文字の仕組みを体得できます。結果、文字を書くのが上手になるんです。
様々な効果を受けながら字も上手になるなら、率先してやりたくなりますよね。
自然に姿勢が正しくなる
基本的に、筆はえんぴつやボールペンと違って、寝かせるのではなく立てて使います。
そして筆を立てて使うには、どうしても姿勢を正さなければ、うまく使うことはできません。筆を倒してしまうと手元が見えないためです。
300文字近くもある写経の最中、常に姿勢を正しく保とうとすることで、無意識に正しい姿勢に必要な腹筋と背筋を鍛えることができます。
はじめての写経では疲れすら感じるかもしれませんが、続けていくことで自然と正しい姿勢が身につきますよ。
イライラを解消できる
ストレスがたまりやすい社会人にとって静かな気持ちでひたすら集中して文字を書くことは、日々の悩みを自分から締め出し、イライラの解消をすることにもつながります。
墨汁のにおいや紙の臭いが落ち着く、という人も少なくはありません。
手を動かし、文字のみに集中して、余計なことを考えずにひたすら漢字を書く。
手軽な方法ながら奥が深い写経を行うことは、日々を円滑に過ごすための潤滑油にもなり得ます。
写経のやりかた、お寺編
本格的な写経の空気感を知りたいなら、お寺で行われる「写経会」に参加してみましょう。
写経ができるお寺は限られていますが、大きなお寺なら機会を設けている所がほとんどです。
毎日受け付けているところもあれば、週末のみ、月1回のみなどの開会もありますので、事前にネットで調べておくと安心です。
写経グッズは用意しなくてもOK
最近では、道具をすべて用意してくれるお寺も増えてきました。そういうお寺では手ぶらで写経会に参加することができるんです。
長時間の正座に注意
写経は正座をして行うところがほとんどですので、痺れが早くこないように、足が楽な服装で臨みましょう。
奉納料とかかる時間
奉納料は、およそ1回1000円~3000円程度のところがほとんど。なかには道具持参で無料になったり、使用した写経筆を持ち帰れるお寺もあります。
時間は2時間程度かかります。お寺によっては写経だけでなく、仏様についてのお話をしてくれたり、お寺の中を散策しながら紹介してくれるところもあるようです。
せっかくなら仏心について少しでも学びたいところ。ぜひ事前に情報のチェックをしていきまそう。
お寺での写経会のおおまかな流れ
写経会のおおまかな流れは
- 手・口を清める
- 法師さま・導師さまによる法話
- 念仏を唱える
- 写経
- 写経が終わった人から解散
このようになります。
家でやるのとは違い、法話が聞けたり、念仏を唱えたり、正規の方法に則ってできることが最大の魅力ですね。
写経のやりかた、おうち編
写経セットが手に入れば、実は家でも写経をすることができます。
どんな道具が必要なのか?どんな風に行うのか?をまとめました。
使用する道具。家でやるなら気軽に使えるもので
筆と墨でやるのが本格的なやり方ではありますが、いちいち取り出すのも、片付けるのも面倒ですよね。
手軽に実践するなら、おすすめは筆ペンを使うことです。
そうなると紙も適当で…といきたいところですが、専用の枠線が書かれている写経用紙が、やはり適しています。
写経見本もついてきますし、最初は写経用紙を購入しましょう。
写経用紙はネットで気軽に手に入れることができますよ。数十枚のお試しセットなら、1000円以下で手に入れられます。
やり始める前に。準備をしよう
写経に取り掛かる前に、集中して写経を行うためには準備が必要になります。次のように準備してから取り掛かりましょう。
- 1、部屋の換気
- まず、部屋の換気を行い、お香などでリラックス空間を作りましょう。よどんだ空気を一度外に出してしまうことで、気持ちを新たに始めることができます。
- 2、着替え
- 服装は部屋着以外で行います。写経は仏様の御心に触れます。部屋着などのオフの格好ではなく、正装して気持ちも体もオンにしましょう。
- 3、写経をする場所を片づける
- 写経は集中して行うことが大切です。写経する場所やその周りを軽く片付けましょう。写経中に目に入るものが写経用紙だけになるのが理想です。
- 4、手・口を清める
- 写経会と同じく手や口を洗い、身を清めます。
- 5、深呼吸をして、心穏やかに始める
- 道具を準備したら、一度深呼吸。心を穏やかにして写経を始めます。
写経中の注意点
心穏やかに写経をするために、なるべく邪魔の入らないようにしましょう。
スマホや携帯の電源を切ったり、他の人が周りにいない時間を見計らうようにします。
写経中にはなるべく、おしゃべりをしたり席を立ったりしないように心がけてください。
写経が終わったら
書きあがった写経は、額縁に入れて自宅に飾るのも良いですが、お寺へ納経することもできます。
この場合納経料(定められてなければ志)がかかりますが、お賽銭と同じく祈願の方法のひとつにもなります。願い事を書き足して、お寺に納めましょう。
写経が上達して自信が持てたら、写経の展覧会に出品してみるのもいいですね。
気軽に参加できる写経で心を落ち着けよう
写経の効果とやり方についてご紹介しました。
元々は修行のために行われていた写経ですが、今では私たちに良い影響を与えてくれる効果のおかげで、根強く人気の趣味になりつつあります。
写経会への参加者数が増えた結果、写経会を開会するお寺も増え、より気軽に参加できるようにもなりました。
たくさんの嬉しい効果が見込まれる写経、ぜひ挑戦してみたいですよね。もちろん写経は仏教の教えを知る、絶好の機会でもあります。
情報が多く刺激の多い現代の社会の中では、それと反対のリラックス空間や心を落ち着ける場所が、私たちには必要です。
これを機に一度、写経会に参加してみるのはいかがでしょうか。